大和総研コラム

新春を迎えて

  • 経済
  • 掲載日 : 2014年1月1日
  • 大和総研理事長 武藤敏郎

2013年の経済政策は、経営者やマーケット関係者のセンチメントを改善させた。また、TPPへの参加交渉を本格化させ、今年4月から消費税率を引き上げることを決定した。我が国経済社会が転換するきっかけとなった年が2013年だったとすれば、2014年は転換を遂げる1年としなければならない。

もちろん課題は山積している。特に、実体経済の回復が、人々の生活水準を左右する賃金の上昇に広がっていくか、注意深くみていかねばならない。また、近隣諸国との政治的・経済的な関係悪化が、日本のアジア戦略に新たな影を落としている。日本と中国は、平和友好条約の原点に立ち返った対話を通じて互恵的な関係を再構築する必要がある。

2014年の世界経済は、昨年と比べて堅調に推移するだろう。家計のバランスシート調整が進んだ米国はQE3からの出口を目指すことになったが、インフレが抑制されている限り、労働市場の改善がかなり鮮明になるまで緩和的な金融政策が続くとみられる。実体経済の回復に即して量的緩和の縮小が進められるのであれば、経済にマイナスというわけではない。昨年12月に与野党間で一定の合意に至った財政問題については、中間選挙を控え、再び不透明さが増さないか注目したい。

欧州経済についても、ECBは緩和的な金融政策の継続を表明しており、昨年とは違って緩やかな成長が見込める。ソブリン危機については、支援受入れを終えることができた国が現れてきている。今年の焦点は、銀行同盟がどのように進展するかだろう。

新興国経済は、ロシアやインドなどの回復を受けて昨年を上回る成長率が見込める。もっとも、持続可能な成長路線を意識するようになった中国の今年の成長率は、やや鈍化するだろう。昨年11月に開催された「三中全会」で中国が示した土地制度や戸籍制度の改革などの挑戦を見守りたい。

翻って日本だが、2014年を経済再生の年とするためには、企業設備投資の本格回復や賃金上昇、デフレ脱却が課題である。昨年末までをみる限り設備投資はリーマンショック以前の水準には回復しておらず、平均賃金の上昇はみられていない。消費者物価は前年比1%程度まで上昇しているが、エネルギー価格の上昇や円安によるコスト増の要因が大きい。

日銀は昨年4月に、2%の物価目標を2年程度の期間で実現するとした。今年後半にはそれを見通せるかどうか、正念場を迎える。来年10月に消費税率を10%へ引き上げることの最終決断を含め、今年は2015年度の財政健全化目標 (基礎的財政収支赤字GDP比の半減) の達成にも目途をつけなければならない。

経済再生は政府と日銀さえ努力すれば実現するものではない。競争力と収益力を強化するために民間企業がリスクをとって投資を行い、生産性を向上させて賃金上昇に結びつけていかないとデフレ脱却を確実なものとすることはできない。国民各層の知恵を結集し、今年が転換点だったと振り返ることができる結果を出す1年としたいものである。


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