2013年3月末より、わが国では国際統一基準行(※1)に対するバーゼルⅢ(※2)の適用が開始している。
バーゼルⅢがもたらす変更のうち、筆者がとりわけ多く質問を受けるテーマとして、銀行の中央清算機関 (CCP:CentralCounterparty) 向けエクスポージャーに対する資本賦課がある(※3)。
CCP向けエクスポージャーについては、従来の告示(※4)では、一般的に (当該エクスポージャーが日々の値洗いにより担保でカバーされている場合に限り、) エクスポージャー額を「ゼロ」とする取扱いが認められていた(※5)。
バーゼルⅢでは、CCPに取引を集中させることにより生じ得る潜在的なシステミック・リスクにかんがみ、エクスポージャー額「ゼロ」を認めるための要件を厳格化しつつも、一定の要件を充足するCCP向けエクスポージャーに対する資本賦課を本則よりも緩和することで、CCPを通じた店頭 (OTC) デリバティブ取引の決済を促進すべく、下図のような見直しがなされている(※6)。
銀行にとっては、エクスポージャーを有するCCPが「適格CCP」に該当するか否か、が重大な関心事となる。それは、「適格CCP」向けエクスポージャーに対しては、所要自己資本額を算出するにあたってリスク・ウェイトを軽減するという取扱いが定められているためである。このことは、直接清算参加者 (clearingmember) のみならず、間接清算参加者 (client) についてもあてはまる (図表参照) 。
それでは、「適格CCP」とはどのようなCCPをいうのであろうか?
この点について、金融庁は、適用開始の直前の2013年3月28日に、該当性判断の留意点を記した「バーゼル3に関する追加Q&A」 (以下、「金融庁Q&A」) を公表している(※7)。
金融庁Q&Aによると、「適格CCP」とは、CCPのうち、次の両要件を満たすものである(※8)。
筆者に質問を下さる方々は、決まって間接清算参加者の立場にある。ヒアリングの結果分かったことは、間接清算参加者にとって問題となるのは①の要件ということである。
金融庁は、①の「必要な情報」について、「バーゼル銀行監督委員会が作成及び公表した統一的なフォーマットに従って算出した結果が、各中央清算機関から銀行に対して提供されることが予定されています」 (金融庁Q&A) としている。
これが意味するところを、間接清算参加者の立場から考えてみよう。
リスク・センシティブ手法をその算出方法の一つとする清算基金の拠出が求められるのは、直接清算参加者のみである。そのため、「適格CCP」がリスク・センシティブ手法により所要自己資本額を算出するにあたって必要な情報を提供すべき「銀行」は、直接清算参加者のみで足りるということになる。
したがって、間接清算参加者の立場から「適格CCP」に該当するか否かを判断するためには、直接清算参加者からその情報を入手しなくてはならない。
しかし、このようなプロセスが求められること自体が、間接清算参加者にとっては負担になる可能性がある。 (少なくとも) 間接清算参加者にとっては、「適格CCP」に該当するCCPのリストが公表されることが望ましいのではないか。
もっとも、金融庁としては、今のところ「適格CCP」リストを公表する予定はないという。
そこで、できることなら、業界横断的な協力の下でこうしたリストの作成を模索してもよいのではないだろうか。
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