大和総研コラム

平成23年度の1年間で、環境中に排出された化学物質は42万9千トン

  • 環境
  • 掲載日 : 2013年5月8日
  • 大和総研環境調査部 主任研究員 伊藤正晴

我々の日常生活は、化学物質を原材料にしたさまざまな製品によって支えられている。そして、化学物質はこれら製品に含まれているだけでなく、製品やその原材料を製造する際や使用する際、そして廃棄する際において大気や水、土壌などの環境中に排出されている。製品に含まれている化学物質については、表示されている原材料名等をみることなどで、ある程度は知ることができよう。しかし、製品を製造する際などで環境中に排出されている化学物質については、その存在を感知することは困難なことが多いのではないだろうか。

環境中にどのような化学物質が排出されているのか、これを知る手掛かりがPRTR (PollutantReleaseandTransferRegister) 制度(※1)である。この制度は、化学物質排出把握管理促進法 (化管法) に基づいて、事業者が届け出た化学物質の排出量や移動量のデータなどを把握し、集計し、公表する仕組みである。このPRTRデータをみることで、毎年、どんな化学物質が、どの排出源から、どれだけ排出されたかを知ることができる。

平成25年2月28日に発表された「平成23年度PRTRデータの概要」(※2)によると、PRTR制度の対象となっている事業者(※3)から届け出のあった化学物質の排出量 (届出排出量) の合計は17万4千トンであった。その内訳は、大気への排出が15万8千トン、公共用水域への排出が9千トン、事業所内への埋め立て処分が7千トンなどとなっており、大気への排出がほとんどを占めている。

環境中への化学物質の排出は、PRTR制度の届出対象となっているものだけではない。PRTR制度では、届け出のあった排出量に加えて、届け出の対象外である事業者、家庭、車などの移動体からの化学物質の排出量の推計も行われており、これを届出外排出量と呼んでいる。届出外排出量の合計は25万5千トンで、そのうち事業者からの排出量が13万3千トン、家庭からの排出量が5万3千トン、移動体からの排出量が6万9千トンとなっている。届出排出量と届出外排出量を合計すると42万9千トンになる。

もちろん、この化学物質のすべてが環境中に残存しているわけではない。例えば、届出排出量と届出外排出量の合計で最も排出量が多いのはトルエンで、その排出量は10万4千トンとなっている。トルエンは、さまざまな化学物質の原料として、また油性塗料や接着剤などの溶剤として使われており、自動車等の排気ガスにも含まれている。そのほとんどは大気中に排出されるが、トルエンは光分解によって1~3日で半分の濃度になるとされている(※4)

このように、排出された化学物質が常に環境中に残存しているのではないが、毎年、さまざまな化学物質が環境中に排出されている。化学物質による環境リスクを減らすために、事業者は事業活動に伴って排出される化学物質を減らす努力の継続が求められよう。また、市民生活においても、化学物質の使用量を減らすことや、リサイクルを心がけることなどを今後も進めて行くことが必要であろう。

参考レポート

「化学物質の届出排出量・移動量の動向」 (2013年4月12日付ESGニュース)


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