大和総研コラム

SNAから見た財政

地方分権の議論に際しての債務残高や社会保障の重要性
  • 政治
  • 掲載日 : 2013年2月14日
  • 大和総研調査本部 主席研究員 市川正樹

財源移譲などの地方分権の議論が行われている。

その際、国と地方を一体的かつ整合的に捉えた財政指標を参照しながら議論を進めることが必要である。SNA (国民経済計算) における財政関係データは、まさにそうした指標である。政府機関の分類などにおいて様々な財政当局による決算等と異なる点はあるものの、政府全体を一般政府とし、更にそれを中央政府、地方政府、社会保障基金の3部門に分けて、それらを一体として整合的に財政赤字や債務残高などの状況を明らかにしている(※1)

最新のSNAデータから、3部門の財政状況をまとめたのが下図である。

中央政府、社会保障基金の支出の水準にはそれほど差はなく、地方政府の支出はそれらより若干低い。一方、収入については、中央政府は相対的に小さく、財政赤字幅は飛びぬけて大きなものとなっている (基礎的財政収支も同様に大きな赤字) 。一方、地方政府と社会保障基金は、中央政府からの多額の経常移転があることもあり、収入は中央政府より高く、しかも地方政府は2011年度においてはむしろ財政黒字 (基礎的財政収支も同様に黒字) であった。社会保障基金の財政赤字幅も、中央政府に比し、それほど大きなものとはなっていない (基礎的財政収支も同様) 。

このような状況が続いていることを反映して、中央政府の債務残高は、グロスで893.5兆円と膨大なものとなっている。一方、地方政府の債務残高は、グロスで189.7兆円と中央政府の5分の1程度である。なお、社会保障基金は、グロスでは13.7兆円の債務残高はあるものの、金融資産残高を差し引いたネットではマイナスの負債残高、つまりプラスのネット資産195.1兆円を有している。しかし、現在のままでは、今後高齢化の一層の進展により社会保障のための支出が増大し、金融資産を取り崩して充当しても賄えなくなるのは明らかである。

現在の地方分権の議論は、財源移譲などに集中しているように見えるものの、このような債務残高や社会保障を含めた全体的な議論が行われることが不可欠であろう。

[図] 政府の各部門の財政状況と部門間の経常移転 [2011年度 (末) 、兆円]

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