大和総研コラム

流動性カバレッジ比率 (LCR) の緩和...?

  • 経済
  • 掲載日 : 2013年1月29日
  • 大和総研金融調査部 研究員 鈴木利光

2013年に入り、「流動性カバレッジ比率」もしくは「LCR」という用語をよく聞く (見る) ようになった気がしないだろうか。

それには理由がある。2013年1月7日、バーゼル銀行監督委員会 (BCBS) は、「流動性カバレッジ比率 (LCR) 」の最終規則を公表したのである(※1)

「流動性カバレッジ比率 (LCR:Liquidity Coverage Ratio) 」とは、「適格流動資産」を「30日間のストレス期間に必要となる流動性」で除することによって得た割合を指す。分母にあたる「30日間のストレス期間に必要となる流動性」は、「資金流出項目 (×掛け目) -資金流入項目 (×掛け目) 」と言い換えられる。

バーゼル銀行監督委員会 (BCBS) は、2010年12月に公表した「バーゼルⅢ」にて、新たにLCRをバーゼル規制 (国際的な銀行の自己資本比率規制に関するガイドライン) に加えている。BCBSは、2010年12月時点のLCRに関するガイドラインを、「ドラフト」と位置付けている。

バーゼルⅢでは、LCRを100%以上と定めている。これを上記の算出方法に当てはめて言い換えると、「銀行は30日間のストレス期間を切り抜けるのに十分な流動資産を保有していなければならない」ということになる。

LCRのドラフトに対しては、全体的に保守的に過ぎ、とりわけ伝統的なリテール銀行、商業銀行にとって過酷な内容となっているのではないかという批判が寄せられてきた。

そういった批判を考慮してか、最終規則では、主に以下の3点がドラフトから変更されている。

BCBS議長のステファン・イングベス氏は、2013年1月24日に行った講演にて、LCRの改訂により、世界最大手銀行200行の平均LCRが、ドラフトで換算した場合の100%強から、125%に上昇している旨述べている (2012年6月末時点のデータに基づく) (※2)

この数字だけ見ると、LCRの改訂は純粋に「緩和」と言うことができそうである。しかし、必ずしもそうとは言えないケースも考えられるようだ。

今回の改訂の目玉は、RMBSを適格流動資産に組み入れることの許容だろう。これを「証券化商品の帰還」と表現できるかもしれない。しかし、報道によると、米国にて発行されているRMBSの多くは、今回の改訂の恩恵を受けることができないという(※3)

というのは、最終規則は、適格流動資産に組み入れることができるRMBSを、完全償還請求権付 (フル・リコース) のものに限定しているが、米国のRMBSの多くはこの要件を満たさないためである。

こうしたフル・リコース要件は、欧州の多くの国におけるRMBSをも適格流動資産から除外することになるという(※4)

BSBS加盟国が今回の最終報告を自国の法規に落とし込む際に、こうしたフル・リコース要件をそのまま受け入れるか否かについては、注視する必要があるだろう。

  • ※1 BCBSウェブサイト参照
  • ※2 BCBSウェブサイト参照
  • ※3 Reuter “US industry group says Basel RMBS rule may not work” [2013年1月7日]等参照
  • ※4 Financial Times “RMBS ‘comes in from the cold’ ” [2013年1月10日]等参照

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