2013年1月1日、東証 (東京証券取引所) と大証 (大阪証券取引所) の経営統合により、日本取引所グループが誕生した。今後は商品取引所がこの日本取引所グループに合流するのかどうかに注目が移ろう。また、金融取 (東京金融取引所) の動向にも注目しておきたい。金融取は日本で唯一金利関連のデリバティブ取引を取扱う。日本取引所グループが総合取引所を目指す場合、金利関連デリバティブ市場を取り込む動きも出てくる可能性もある。
日本取引所グループは上場会社であり、シナジー効果が見出せない企業組織再編は株主からの理解が得られない。下表は各取引所の営業収益と経常損益を示したものであるが、国内の商品取引所は売買が低迷しており、経営状況は厳しい。東穀取 (東京穀物商品取引所) は2013年2月に東工取 (東京工業品取引所) と関商取 (関西商品取引所) に業務を移管し、株主総会の決議を経たのちに解散予定である(※1)。残る東工取や関商取が日本取引所グループへの合流を目指す場合は、まず収益力を高める必要があるだろう。
東工取は売買低迷を打破すべく、中文 (中国語) サイトの開設や“ダイレクト・マーケット・アクセス”の推進など、海外投資家の呼び込みを強化している(※2)。今後東穀取から農産物・砂糖市場を受け継ぐことで提供するサービスの幅が広がることに加え、LNG先物取引や外貨建て取引の導入などの新サービスの検討も開始されており、これらが売買回復の足掛かりとなる可能性もある。
関商取は保有している不動産の賃貸収入が最も大きな収入源となっており (営業収益に関しては図表に記載されている東穀取よりさらに少ない) 、置かれている状況は東工取より厳しい。東穀取から移管されるコメ先物も、試験上場期間が2013年8月までとなっておりいずれ本上場申請の判断を迫られる。仮に本上場を申請した場合も、政治的背景から認可が下りるか不透明な状況にある (自由民主党はコメ先物の試験上場認可の際、反対を表明している) 。関商取の取扱商品はコメ先物を除けば東穀取 (2013年2月以降は東工取に移管) と重複するものが多く、商品取引所としての存在意義が問われることになろう。
2012年、海外では商品取引所を中心とした取引所の再編がみられた。例えば、香港取引所は12月にLME (London Metal Exchange:ロンドン金属取引所) の買収を完了した。同月、エネルギー関連のデリバティブ取引に強みを持つICE (International continental Exchange:インターコンチネンタル取引所) はNYSEユーロネクストを買収すると発表した(※3)。今後も商品・デリバティブ取引所を巡る再編の動きは続く可能性がある。
日本の取引所はその中でどのような立ち位置を取るのか。国内で団結するのか、海外の取引所と手を組むのか、独自で生き残る道を選ぶのか。いずれにしろ、2013年は取引所に一企業としての決断が求められる年になりそうである。
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