大和総研コラム

選択と行動

  • 政治
  • 掲載日 : 2012年12月27日
  • 大和総研環境調査部 岡野武志

選択肢が多すぎると、人は選べなくなることがあるという。数年前にTVコマーシャルで扱われたこともあるが、このような傾向は「決定回避の法則」などと呼ばれている。12月16日に行われた衆議院議員選挙では、多数の政党や諸派・無所属から、小選挙区1,294人、比例区1,117人 (小選挙区との重複907人) が立候補し、候補者数は現行制度の導入以来最多の1,504人となった。各党の政策の違いが分かりにくかったためか、国民にとって重要な事柄が争点に盛り込まれなかったためか、小選挙区の投票率は、2009年 (69.28%) と比較して約10ポイント低い59.32%となり、戦後最低を記録したという。小選挙区全体では、投票所に足を運びながら、約204万票が白票等の無効票として投じられたとされており(※1)、国民が今回の選挙に苦慮した姿の一端をうかがうことができる。

2009年に行われた衆院選における1票の格差 (最大格差2.3倍) について、最高裁は2011年3月に「違憲状態」にあると判断している(※2)。今回の選挙はこの違憲状態が是正されないまま、09年と同じ区割りで実施されており、1票の格差は2.4倍以上に拡大している。有権者数が多い千葉4区 (当日有権者数約49万5千人) (※3)では、候補者4人のうち1名が、約16万3千票を獲得して当選したのに対し、有権者数最少とみられる高知3区 (同約20万4千人) (※4)では、候補者2名で争われ得票数約8万1千票の候補者が当選となっている。日本国憲法では、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」することになっており、違憲状態で選挙された国会が立法権を持つことには疑義もあろう。そのため、選挙無効を求める訴訟が、全国で多数起きているという。

しかし、選挙における選択が難しく、その制度自体に疑義があるとしても、国民の意思を実現するプロセスは、選挙だけに限られているわけではない。国民は自ら行動することで、社会や経済を変えることができるであろう。原子力発電所再稼働に反対の立場であれば、太陽光発電などで電力を作り出すことや効率の良い機器を活用して電力使用量を削減することなどで、原子力発電の縮小を促すことも考えられる。環境負荷が小さく品質の良い物を長く使う生活を選択すれば、資源・エネルギーや環境の問題を改善するだけでなく、企業などの価値観や行動を変えることも期待できる。日頃から健康管理に心掛け、高齢でも元気に働き続けることができれば、医療・介護や年金も大きな課題ではなくなるかもしれない。眠らせている預金を若者や地域、科学技術などへの投資に向ければ、新たな成長産業を生み出し、地域や国の未来を開くことも可能であろう。

政府や企業が何かしてくれることを待ち、それに依存することでは、解決できない課題もある。国民が主役であるためには、自らの行動によって、政府や企業が動くべき方向を示していく必要もあるだろう。情報・通信が発達した現代では、一人の行動にも大きな広がりを持たせることができる。共感する人々の行動が大きな潮流となれば、社会や経済を変えることも可能であろう。日本は、経済の長期低迷や少子高齢化などの課題に、早くから直面している国の一つといえよう。これまで幾多の自然災害や社会・経済の難局を乗り越えてきた日本が、これらの課題をどのように克服していくのか、各国も注目していることであろう。アニメやアイドルだけでなく、人々の行動が新しい時代を切り開いていく姿を、世界に向けて発信できる日が来ることを期待したい。

  • ※1 朝日新聞による集計
  • ※2 「平成23年03月23日 最高裁判所大法廷判決」
  • ※3 「衆議院議員総選挙投開票速報」千葉県選挙管理委員会
  • ※4 「平成24年12月16日執行 衆議院議員総選挙 選挙速報」高知県選挙管理委員会

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