大和総研コラム

人民元相場急騰は続くのか?

  • 国際
  • 掲載日 : 2012年12月7日
  • 大和総研常務理事 金森俊樹

2012年の相場推移から何が見えるか

2012年中の相場の推移を概観すると、概ね次のようになろう。

(1) 年初、2011年からの相場上昇期待がなお若干残り、1年物先渡し相場 (ノン・デリバラブル・フォーワード、NDF) が上海相場 (CNY) や香港相場 (CNH) に比し元高で推移し、CNYやCNHも上昇したが、3月頃を境にこれらの状況が逆転した。この背景としては、中国から見て短期資金が流入から流出傾向になったこと、対外不均衡の是正が顕著に進んだこと、外貨準備の急増傾向に歯止めがかかったこと、これらを受けて、中国当局が、一本調子で上昇してきた人民元相場は均衡水準に近づきつつあるとの発言を繰り返すようになったことが挙げられる。その結果、市場に元相場下落期待が生じ、人民銀行が毎日設定する中心レートから、CNYは変動幅の元安下限方向に振れるようになった。4月、変動幅が拡大 (±0.5%から±1%へ) され、中心レートからのCNYのかい離幅が大きくなった。

(2) 7月末以降、再び元上昇局面を迎え、特に10月中旬以降上昇が加速、中心レートからCNYは元高方向 (10月以降は、しばしば上限) へ振れている。7月末から3か月間で2%以上上昇、10月16日6.26元突破、94年以降最高値となり、その後も12月にかけたびたび最高値を更新している。急激な元上昇の要因として、貿易、特に輸出、マネーサプライ統計等から、中国の景気が当面の底を打ったとの期待が市場で強くなったこと、党大会直前の時期となり、経済関係人事面からくる政策面での不透明感がなくなってきたと市場で捉えられたこと、米国大統領選直前で、中国当局が米国からの圧力を考慮したこと (あるいは、そう市場が受け止めたこと) 、欧米諸国が量的緩和政策を続ける中で、人民銀行はリバースレポ方式で市場に流動性を供給した結果、中国は相対的に高利子通貨となり、投資家が外貨から人民元に回帰する傾向が強まったこと等の要因が市場で指摘されている。

特徴として以下の3点が指摘できる。総じて、人民元改革、相場の弾力化はさらに進んでいると見ることができよう。

(1) 昨年までに比し、CNYとCNHいずれも双方向へ大きく振れ、両者のかい離が縮小し、ほぼ同じ動きとなってきたこと。

(2) 政府関係者等の均衡水準発言を反映して、人民銀行は中心レートを基本的に6.3-6.35に設定 (このあたりを均衡水準と見ているということか) 。10月以降は市場実勢に合わせ元高方向に設定。市場に介入して元安に誘導しようとする姿勢は見えず、元が上昇する実勢を容認するシグナルを市場に発したこと。

(3) NDFが昨年までと異なって、基本的にCNY, CNHより元安水準で推移しており、内外金利差を反映し、金利平価がある程度あてはまる状況になったこと。

[図]
  • (資料) ブルームバーグ報道より大和総研作成

今後に向けての視点

概ね以下の点から、当面、一層の相場上昇の余地は急速に縮小してきているのではないか。またそれが中国市場関係者の大勢の見方でもあると思われる (11月27日、12月3日付経済参考報、11月1日、7日付証券時報、5日付中証網、26日付第一財経日報等) 。

(1) 欧州信用不安は小康状態になっているが、再び市場で懸念されるリスクは排除できず、そうするとドルの下落余地が縮小 (人民元資産は、市場ではなおリスク資産に分類されており、欧州信用不安が小康状態の間、国際的にホットマネーがリスク資産に向かったが、一旦欧州情勢が悪化すると、マネーが流入して人民元資産に向かう力は弱まる) 。

(2) 中国の対外不均衡の程度が明らかに縮小 (経常黒字対GDP比、2006-2011年7.6%から2012年1-9月は2.7%) 。これを基本的根拠に、中国当局の「均衡水準」発言は続くと予想される (ただし念頭にある水準は、2012年前半の6.30-6.35程度から6.2-6.3程度に修正されているかもしれず) 。

(3) 輸出がやや改善傾向にあるとは言ってもなお弱い、特に中小企業の輸出不振から、一層の人民元高を許さない状況になりつつある。

(4) 上記、米国大統領選挙や中国党大会といった政治的要因は剥落。

中期的に考えた場合、不確定要素が多く即断することは危険だが、(i) 中国は、やや伸び率が減速傾向にあるとはいえ、米国等先進経済との比較ではなお高い成長を続けると見込まれること、(ii) 対米黒字はなお大きいこと、(iii) 人民元相場の基礎となる通貨バスケットの中身の詳細は不明であるが、ウェイトが高いと思われるドルとユーロの変動はシーソー効果 (中国で言うところの‘跷跷板效応’、一方が上がると他方が下がって効果が相殺される) で打ち消される一方、バスケットに入っているその他の新興通貨は総じて上昇傾向にあり、バスケット全体には上昇圧力がかかりやすいこと (中国銀行Bank of China経済月刊10月) 等に鑑みると、人民元相場はなお上昇する余地は残されているとの見方も中国内に根強くある (上述経済月刊、11月28日付国際金融報等) 。中国当局が市場実勢を重視して相場の弾力化を一層進めると仮定すると、双方向への変動を伴いつつも、元高水準がもう一段更新されていく局面も排除されないのではないか (12月7日付アジアンインサイト) 。


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