大和総研コラム

本格的な景気拡大を目指して

景気の転換点は2011年8月?
  • 経済
  • 掲載日 : 2012年11月12日
  • 大和総研経済調査部 齋藤勉

11月6日に発表された景気動向指数をもとに、内閣府は基調判断を「下方への局面変化」に下方修正した。12月には、内閣府は基調判断を「悪化している」にさらに下方修正する見込みだ。

政府や日銀の景気判断は足下で下方修正が相次いでおり、急速に悪化しているように見える。これは、景気を下支えしてきた自動車産業の生産減少によるものが大きい。

図表1を見ると、鉱工業生産指数のピークは2012年3月であるが、輸送機械工業の影響を差し引くと、2011年8月に既にピークを付けていたことがわかる。すなわち、2011年の後半から2012年の前半までの生産活動は、輸送機械工業、特に乗用車の生産が支えていたのである。

2011年後半から2012年の前半にかけて、2011年度第4次補正予算によって復活したエコカー補助金の影響で、乗用車の国内出荷が増加した。また、東日本大震災やタイの洪水の影響で減少した海外在庫を補充するべく、自動車メーカーは海外出荷も増やしていた。

しかし、エコカー補助金による乗用車の国内出荷の増加は、補助金が予算切れする前にピークアウトし、夏場以降国内出荷台数は大きく落ち込むこととなった。また、自動車メーカーによる海外在庫の補充も、2012年の春先には終了し、同様に夏場以降海外出荷台数は減少が続いている (図表2) 。

輸送機械工業を除くベースで見た鉱工業生産指数からは、エコカー補助金や海外の在庫補充による自動車の増産の影響が無ければ、2011年の夏頃が景気の転換点であった可能性が示唆される。欧州経済の減速や、それに影響された中国の不調の時期と重なり、まさに海外経済の影響を直接的に被ったといえよう。

それにもかかわらずGDPベースで成長が続き、景気後退とみなされなかったのは、輸送機械工業の生産増加による、景気の下支え効果があったためである。しかし、これは特殊要因による需要の上振れによるものであり、実力で経済成長していたとは言えない。

日本経済は海外経済が不調である限り、実力で成長することはできないのだろうか。しかし、日本と欧州の財政問題国を除いた主要国は、この期間も堅調に成長を続けている。他国にできて、日本にできないというのは、あまりにも絶望的な話である。

日本が、多少の海外経済の悪化に影響されずに本格的な景気拡大を続けるには、経済構造自体を見直す必要があるだろう。為替が円高水準で推移する中、海外経済の影響を受けない実力を身に付けるには、輸出依存の経済構造からの脱却が不可避であると考えている。

図表1 輸送機械工業の影響を除いた鉱工業生産指数の推移
  • (注) 季節調整値の3ヶ月移動平均値。
  • (出所) 経済産業省統計より大和総研作成
図表2 自動車出荷台数の推移
  • (注) 季節調整値3ヶ月移動平均値の前月比。季節調整は大和総研。
  • (出所) 自動車工業会統計より大和総研作成

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