大和総研コラム

改革を望む「確定拠出年金」

積み増しも、引き出しもできない「運用指図者」?
  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2012年10月30日
  • 大和総研金融調査部 佐川あぐり

日本版401 (k) と呼ばれる確定拠出年金がスタートしたのが2001年。10年以上が経過し、“401 (k) ”という言葉も、大分世の中に浸透してきたように思われる。しかし、まだまだ使い勝手の良さという点でいうと、改善の余地も大きい。今回は、確定拠出年金制度上の「運用指図者」という存在について考えてみたい。

確定拠出年金制度の「加入者」は、掛け金を拠出しつつ、自ら運用を指図する。対して、「運用指図者」は、掛け金は拠出できず、運用を指図するだけである。

どのような場合に、運用指図者となるのか。一つに、掛け金を積み立てないことを自ら選択した場合がある。しかし、確定拠出年金制度の中で、「企業型」から「個人型」への制度変更によって運用指図者となる場合もあり、多くはこの理由であるという。

例えば、「企業型」の加入者が、退職をして自営で事業を始めたとする。この場合、「企業型」から「個人型」へ、制度変更をしなくてはならない。なぜなら、「企業型」は勤務する会社が実施する制度であり、その会社を退職すれば加入資格はないからである。よって、自営業者となった者は、改めて「個人型」の加入者として積み立てを行うことができる。しかし、専業主婦となった場合は、「個人型」の加入者ではなく、運用指図者となる。これは、専業主婦は「企業型」だけでなく、「個人型」への加入資格も持たないからである。よって、専業主婦となった者は、運用指図者として、これまで働いていた間に積み立てられた資産の運用だけを行い、それ以上の積み増しはできない。

また、「企業型」の加入者が転職し、転職先が「企業型」の制度を実施していない場合も、「個人型」へ変更となる。しかし、転職先にその他の確定給付型の企業年金制度(厚生年金基金や確定給付企業年金など)がある場合には、運用指図者となる。なぜなら、このケースでも「個人型」の加入資格がないからである。

このように、「個人型」の加入資格は要件が厳しく、運用指図者とならざるを得ないケースが意外と多い。2012年3月末時点で、「個人型」の加入者は約12万人であるのに対し、運用指図者は約24万人と、2倍近くもいる(※1)。また、過去のデータでは資産額も運用指図者の方が大きく(※2)、現在もその傾向は続いていると予想される。つまり、「個人型」の資産の多くは、掛け金を積み増すことができない制約を受けた資産である。その上、確定拠出年金制度では60歳まで原則引き出しができない。運用指図者の資産は、積み増しも、引き出しもできないのが現状だ。

上限付きでも、運用指図者がさらに掛け金を拠出できるような仕組みを整える必要があるのではないか。公的年金の財政がひっ迫している状況下では、自助努力型の確定拠出年金制度の持つ意義は大きい。課題を一つ一つ克服していくことで、制度に加入したいと思う人達がさらに増えるだろう。確定拠出年金制度が使い勝手の良い制度として、一層普及していくことが期待される。


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