大和総研コラム

ポテトチップスと阿闍梨餅

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2017年4月20日
  • 大和総研調査本部 主席研究員 河口真理子

ポテトチップスといえばスナック菓子の横綱。かたや阿闍梨餅は京都を代表する銘菓。この二つには意外な共通点がある。それは「気候変動の被害者」ということである。

4月10日の日本経済新聞では主要メーカーのポテトチップスの一部販売休止が報道された(※1)。カルビーは33品目、湖池屋は16品目の販売を休止あるいは終了するとのこと。理由は主原料の北海道産ジャガイモの不作。国産ジャガイモ生産の8割を占める北海道では、昨年6月の長雨による日照不足と8月の相次ぐ台風襲来の被害を受け、昨年の出荷量は1割減少したという。

筆者は契約農家の野菜を扱う生協で主な食材を購入している。ジャガイモは北海道の有機農家のもので、ポテトサラダにすると判るのだがその辺のスーパーの品より格段に美味しかった。しかしこの冬は、傷が多く水っぽいジャガイモが混ざるようになっていた。うすうす昨年の台風の影響かと思っていたが今回の報道を見て改めて産地の厳しい状況が理解できた。

その数日後出てきたのは、京都の代表的銘菓阿闍梨餅が4月から10月の間水曜日の販売を休止するというニュースである。こちらは、主原料の丹波大納言小豆が昨年の大凶作で入手困難になったためで、大正時代の販売開始から初めての減産になるという。

いずれも産地を変えれば生産できるのだろうが、産地にこだわると減産という決断になったようだ。ファンには好物が食べにくくなるのは残念だが、まだ消費者の日常生活に大きな支障が出るレベルではない。阿闍梨餅も販売休止は10月までとし今年の収穫は通常どおりを想定している。しかし、これらは一過性のアンラッキーな出来事で終わるのだろうか。

楽観的に考えたいが、地球を取り巻く現実はもっと厳しく、今回のことは気候変動の予兆と理解すべきではないかと思う。この春も3月下旬には桜が開花してから真冬の寒さに戻ったり今週も日曜日は全国的に夏日になったかと思うと月曜日から火曜日には大雨と強風、それが去ったら関東では最高気温30℃の真夏日になり、身体が気温変化についていけない状況だ。

世界に目を向けても、昨年6月には米国南西部の熱波 (アリゾナ州フェニックスで48℃) 、7月の中国長江流域での多雨による洪水や土砂災害、今年の春は南米北西部のコロンビアやペルーで大雨による洪水や大規模土砂災害が発生するなど、異常気象のニュースが増えている。

温暖化は一様に気温が徐々に上がるのではなく、気候がますます不安定になり異常な暑さか寒さ、干ばつか多雨という極端な気象が多発するようになる。先ほどの日本経済新聞によると、ジャガイモ不作は昨年の北海道だけのことではないようだ。この4月に出荷が本格化してきた鹿児島県産も降雨の影響で出荷量が平年より1割少なく、すでに3月の平均卸値は過去5年平均に比べ5割高だという。パリ合意では気候変動の上昇を産業革命以前から2℃未満に抑えることが合意されたが、現状の政策や経済システムではその達成は困難といわれる。すでに地球の平均気温は0.85℃上昇してしまった。が、0.85℃の上昇でこれだけ気候不安定化し影響が出ている。ポテトチップスと阿闍梨餅のことは、日常生活にも気候変動の影響が表れ始めたと捉えるべきだろう。今年は、丹波や北海道の天気は恵まれたとしても別な産地の作物が甚大な被害を受けるかもしれない。

でも現状はお菓子の減産がニュースになる段階である。これが今後米や小麦など主食に及ばないように、せめてポテトチップスを食べるときは、気候変動とは今起きつつある自分事であるという自覚を少しでも多くの人が持ち、省エネや再エネなど自らできることはなんでも行動に移していくべきではないか。


このコラムと同じカテゴリの他のコラムを読む

年別

カテゴリ別