為替とは

外貨預金をする上で、ぜひ覚えておきたいのが「為替」です。為替について、「言葉は聞いたことがあるけれど、詳しくは知らない」という方も多いのではないでしょうか。とはいえ、外貨預金の運用には、為替を理解することが必要です。そこで今回は、外貨預金を上手く活用していくために、為替の基本について解説していきます。

為替について

為替とは、「現金の代わりに、手形・小切手・証書などで決済をすませる方法」です。さらに、異国間で為替が行われる場合は、通貨の交換を伴うため「外国為替」と名称が変わります。

外国為替相場と、相場を動かす要因

異なる国の通貨の交換比率(相場)のことを「外国為替相場」と呼び、この「外国為替相場」は市場で需要と供給により決まっていきます。このように「外国為替相場」が形成される市場のことを「外国為替市場」といいます。外国為替市場において形成される異なる国の通貨の交換(売買)比率が「為替相場(為替レート)」と呼ばれるものです。
「円高・円安」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、これは外国為替相場によって、相対する通貨に対して円の価値が高まっているのか、安くなっているのかを表す言葉です。相対する通貨に対して円の価値が高くなれば「円高」、低くなれば「円安」と表現されます。
為替相場は、経済情勢などの影響を受けながら、市場における需要と供給のバランスによって決まる仕組みになっています。外貨預金を活用するためには、この円高と円安のタイミングを見極めることがポイントになります。

為替差益と為替差損

為替相場により通貨の価値が変動するにしたがって、外貨預金として貯蓄している資産の価値も同様に変動することになります。
例えば、円高になると、円の価値が高まり外貨の価値が下がるため、1単位当たりの外貨で交換できる円が減少し、外貨預金の元本は円換算で目減りすることになります。逆に円安になると円の価値が下がり外貨の価値が上がるため、1単位当たりの外貨で交換できる円が増え、円換算で利益が出ることになります。この為替レートの変動によって、円貨での受取額が増減して生じた利益や損失のことをまとめて「為替差損益」と呼び、利益が出た場合を「為替差益」、損失が生じた場合を「為替差損」と表現します。

外国為替市場の規模と取引高

外国為替市場は世界中に存在し、為替レートは24時間変動し続けています。取引される通貨の種類や取引高は様々ですが、米ドル、ユーロ、円の3通貨は取引高が大きいため、ニューヨーク、ロンドン、東京を世界三大市場と呼んでいます。
また、ニューヨークとロンドンの取引が重なる時間帯(日本時間で22~2時)は、最も為替取引が活発な時間と言われており、ここでの動向によって世界中の為替相場が大きく変動することも少なくありません。つまり、外貨預金を運用していく上では、東京の市場だけを見ていればよいわけではなく、ニューヨークやロンドンなどのビッグマーケットも注視しておく必要があるのです。

2022年の外国為替市場の規模と取引高

表は横にスライドして閲覧できます。

順位 国名 取引高 割合(%)
1 イギリス 3,755 38.1
2 アメリカ 1,912 19.4
3 シンガポール 929 9.4
4 香港 694 7.1
5 日本 433 4.4
6 スイス 350 3.6
7 フランス 214 2.2
8 ドイツ 184 1.9
9 カナダ 172 1.7
10 中国 153 1.6
  • 単位:10億米ドル
  • 引用元:日本銀行資料

円高・円安を理解するためのケーススタディ

為替相場によって、外貨預金の預金額がどれだけ変化するのかを理解するために、円高時と円安時の例をとって考えてみましょう。

  • 以下のケーススタディには、為替手数料は含まれていません。

【外貨ベースでの元本】 外貨への両替(100万円を米ドルに交換する場合)
(小数点第2位以下切り捨て、以下同じ)

  • 1米ドル100円(円高)の場合→約10,000.00米ドル
  • 1米ドル120円(基準)の場合→約8,333.33米ドル
  • 1米ドル140円(円安)の場合→約7,142.85米ドル

上記為替レートに応じた元本計算の例では、1米ドル120円を基準とし、1米ドル100円が円高、1米ドル140円を円安としています。円を米ドルに交換したタイミングで、すでに円高と円安では交換できる外貨の金額にかなりの差が出ていることがわかると思います。これらを外貨ベースの元本として、1年間外貨普通預金に預け入れた場合を考えると以下のようになります(金利は年0.50%として計算)。

CASE1外貨普通預金の利息

  • 1米ドル100円(円高)の場合→約10,000.00米ドル×年0.50%=約50.00米ドル
  • 1米ドル120円(基準)の場合→約8,333.33米ドル×年0.50%=約41.66米ドル
  • 1米ドル140円(円安)の場合→約7,142.85米ドル×年0.50%=約35.71米ドル

また、1年間の外貨定期預金として運用した場合の利益差についても見てみましょう。ここでは、大和ネクスト銀行で米ドルの外貨定期預金をした場合の金利に合わせて、年5.00%の金利(※2024年1月16日現在)とします。

CASE2外貨定期預金の利息

  • 1米ドル100円(円高)の場合→約10,000.00米ドル×年5.00%=約500.00米ドル
  • 1米ドル120円(基準)の場合→約8,333.33米ドル×年5.00%=約416.66米ドル
  • 1米ドル140円(円安)の場合→約7,142.85米ドル×年5.00%=約357.14米ドル

最後に、【CASE1】【CASE2】の最終的な預金額を円に戻した場合に、預入時の円の元本と比較して円高時と円安時では、どれくらい差が生まれるのかパターンに分けて見てみましょう。

普通預金の場合

表は横にスライドして閲覧できます。

  外貨普通預金をはじめた時の為替レート
100円(円高) 120円(基準) 140円(円安)
【外貨元本】円→米ドル① 10,000.00米ドル 8,333.33米ドル 7,142.85米ドル
【CASE1】外貨普通預金の利息(年0.50%)② 50.00米ドル 41.66米ドル 35.71米ドル
外貨普通預金の1年後の外貨ベースでの合計金額③
(=①+②)
10,050.00米ドル 8,374.99米ドル 7,178.56米ドル
③を米ドル→円に戻したときの受取金額 円に戻す際の為替レート 100円(円高) 1,005,000円
(+5,000円)
837,499円
(-162,501円)
717,856円
(-282,144円)
120円(基準) 1,206,000円
(+206,000円)
1,004,998円
(+4,998円)
861,427円
(-138,573円)
140円(円安) 1,407,000円
(+407,000円)
1,172,498円
(+172,498円)
1,004,998円
(+4,998円)
  • ○は利益が出るもの、×は元本割れしてしまうもの

定期預金の場合

表は横にスライドして閲覧できます。

  外貨預金をはじめた時の為替レート
100円(円高) 120円(基準) 140円(円安)
【外貨元本】円→米ドル① 10,000.00米ドル 8,333.33米ドル 7,142.85米ドル
【CASE2】外貨定期預金の利息(年5.00%)② 500.00米ドル 416.66米ドル 357.14米ドル
外貨定期預金の1年後の外貨ベースでの合計金額③
(=①+②)
10,500.00米ドル 8,749.99米ドル 7,499.99米ドル
③を米ドル→円に戻したときの受取金額 円に戻す際の為替レート 100円(円高) 1,050,000円
(+50,000)
874,999円
(-125,001円)
749,999円
(-250,001円)
120円(基準) 1,260,000円
(+260,000円)
1,049,998円
(+49,998円)
899,988円
(-100,002円)
140円(円安) 1,470,000円
(+470,000円)
1,224,998円
(+224,998円)
1,049,998円
(+49,998円)
  • ○は利益が出るもの、×は元本割れしてしまうもの

このように、同じ円金額の元本でスタートしても、円高円安のタイミングによっては、金利水準だけでなく、かなりの利益差が生まれることになってしまいます。外貨預金をする上では、「円高時に外貨に換えて、円安時に円に戻す」のが基本。相場の動きをチェックしながら、損をしないように注意してください。

為替チャートの見かたと知りたい情報を手に入れるためのコツ

為替相場をチェックする際に、必ずチェックしてほしいのが、「為替チャート」です。為替チャートとは、過去の為替レートの値動きを、価格軸と時間軸でグラフ化した図表のこと。為替相場の動きを数字だけではなく、流れと合わせて読み取ることができるため、今後の予測にも活用できる点などの、メリットが多数あります。
為替チャートは、為替や金融ニュースなどの専門サイトや、各銀行のホームページなどで確認することができるので、以下のポイントを踏まえた上でチェックしてみましょう。

為替チャートの基本的な見かた

為替チャートを読み解く上で基本となるのが、「ローソク足」と「移動平均線」です。
ローソク足とは、為替相場の値動きが一目でわかるように、一定期間の「4本値(始値、終値、高値、安値)」の情報を集約して表現した図表のことで、形がローソクに似ていることからこう呼ばれています。ローソク足の表示期間には、1分・5分・1時間・1日(日足)・1週間(週足)・1月(月足)などがあり、自分が知りたい期間を選んでロウソク足を表示させることができるサイトも多数あります。使い方を理解するためにも、最初は色々と試してみることをおすすめします。なお、チャートの上方向は円安方向、下方向は円高方向ということも合わせて覚えておくとよいでしょう。

ローソク足の見かた

始値、終値、高値、安値は、上記の位置で読み取ることができます。また、始値より終値が高い場合は「陽線」、始値より終値が低い場合は「陰線」と呼ばれ、色分けされて表示されるので、視覚的に相場の動きを捉えることができます。

移動平均線の見かた

「移動平均線」とは、一定期間の終値の平均値を出して、それをつないだ線のことを指し、大局的なトレンドをつかむ際に有効です。こちらも自分の好みに合わせてカスタマイズすることが可能なものもありますが、慣れないうちは、チャートの期間が短期間なら1週間~1ヶ月程度、長期間なら半年~1年程度の移動平均線を利用するのがおすすめです。