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2016年8月30日

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注目集める増配企業 日米「連続増配企業」を調べてわかった長期記録

増配企業
(写真=PIXTA)

2016年3月決算期に「駆け込み増配」という言葉が新聞などメディアで取り上げられたことをご存じだろうか。駆け込み増配とは、決算期末前に配当金を増額することを発表するものだ。2015年4~12月期決算発表後に配当予想を引き上げた企業が127社と9年ぶりの高水準になり、最近では配当を引き上げることが企業統治改革としての効果のひとつとなっている模様だ。

それでは、こうした流れ以前から配当を増やしてきた企業にはどのようなところがあるのだろうか。日米それぞれの連続増配を実施している企業を調べると、長期にわたって連続増配を行っている企業があるのだ。

S&P500配当貴族指数に注目

S&P500配当貴族指数という株価指数をご存じだろうか。特徴的なのは、25年以上連続増配を行っている企業の株価から構成されることだ。これは米国S&P500構成銘柄のうち30億ドル以上の大型株で、過去25年間連続して毎年増配を行っている企業から、入れ替え等を伴って算出されている株価指数だ。例外もあるが、一般的に連続増配ができる企業は、業績がよく、成功している企業が多い傾向にある。また、株主還元といった側面から連続増配する企業も多いため、株主を重視しているともいえる。

実はS&P500配当貴族指数は、長期的に見るとS&P500指数よりも良いパフォーマンスを出している。6月10日現在の10年年次リターンはS&P指数が5.29%なのに対し、S&P配当貴族指数は7.70%となっていることがその証明だ。最終的には増配=成長と捉えることができるため、後述するP&Gのように株価も順調に推移している場合が多いといえる。

さて、このS&P500配当貴族指数に選出されている銘柄には、どのようなものがあるのだろうか。

連続増配という点から見て注目したいのがP&Gだ。このP&Gはなんと59年間、連続増配を行っている。P&Gはオハイオ州に本拠を置く世界最大の一般消費財メーカーだ。衣料用洗剤「アリエール」やエアケアの「ファブリーズ」、乳児用紙おむつ「パンパース」といった製品名を、多くの人が一度は聞いた事があるだろう。

このほか、エマソン・エレクトリックも挙げておこう。同社は58年連続して増配を行っており、長期投資家には注目の的となるのではないだろうか。ミズーリ州セントルイスに本拠を置く世界有数の多国籍企業で、冷凍空調制御事業やプロセス・マネジメント事業など数多くの事業を手掛けており、世界150ヵ国以上で事業を展開している。

こうした長期間にわたって連続増配を行う企業の株価は、長期的に見れば上昇する傾向にある。実際、P&Gの株価を見ると、10年前が60ドル前後だったのに対し、現在は80ドル前後で推移している。配当増額は株主重視の姿勢にもなるため、それが株価にも反映されているといえる。

それでは日本の増配企業はどうだろうか。実は、過去25年以上増配というS&P500配当貴族指数と同様の条件に該当する上場企業は1社しかない。それは花王だ。

花王は言わずと知れた大手化学メーカーで、洗剤や化粧品などの製造を手掛けている。日米いずれにおいても、配当をしっかり出し続ける企業は、普段から必要とする日常生活品の製造販売を手掛ける企業が多い。こうした企業の製品は、利用者に浸透すれば日々使い続けることになるからだろう。それが企業の売り上げ増加にもつながり、ひいては増配につながっていると推測できる。

日本ではS&P500配当貴族指数の要件に該当する企業が花王しかないことを考慮すると、米国の方が株主重視の姿勢が強いという見方もできるのではないだろうか。ただし、最近ではこうした動きは日本でも強くなってきている。そのため、投資を行う際の一つの目安として、未来の連続増配企業を探すべく、配当性向に注目してみてはいかがだろうか。配当性向とは、企業が当期純利益に対して、どのぐらいの割合を配当に回しているかをパーセンテージで示すものだ。すなわち、この割合が高ければ株主重視の姿勢が強いとも見て取れる。

配当性向が高ければ必ずしも良いというわけではないものの、その企業が株主に対する想いが強いかどうかは推測できる。日本の上場企業の配当性向の平均は、30%弱とされている。もっとも望ましいのは配当性向が比較的高く、利益をしっかり出し続けている企業だろう。こうした企業は、株価も堅調なケースが多いといえる。

今後、米国のような25年以上連続増配という企業は、日本でも多く出てくることになるかもしれない。そうした流れからいえば、今のうちに米国の連続配当銘柄の特徴を分析することで日本株投資でも活かせるポイントを見つけてみてはいかがだろうか。

(提供:株式会社ZUU)

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