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2016年8月9日

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月に1回の大イベント 世界中の市場関係者が注目する米雇用統計とは ?

米雇用統計
(写真=PIXTA)

現在、世界経済で関心の高いトピックの一つといえば、米国の利上げだろう。世界の株式市場や為替市場などに多大な影響を与える米国の利上げについて見ていこう。

米雇用統計は米国の景気を反映

米雇用統計は米国労働省が発表する経済指標だ。全米の企業や政府機関などにサンプル調査を行って集計した十数項目の数字が、NY時間で毎月第1金曜日の午前8時30分に発表される (第2金曜日になる場合もあり) 。世界中の市場関係者や個人投資家が発表のタイミングを待ち構えており、雇用統計の結果によって世界中の株価や為替相場が大きく変動する。

米雇用統計が大きな注目を集める理由の一つは、米国の景気との連動性が高いからだ。雇用が安定しないと個人の財布のヒモはかたくなり、個人消費が冷え込む。米国ではGDPの約70%近くを個人消費が占めているといわれており、雇用情勢の悪化はGDPの低下・景気の悪化を招くことになる。逆に雇用が安定していれば個人消費も堅調で、米国景気は好調であるといえる。米国の景気を判断するのに雇用統計は欠かせない指標なのだ。

FRBの金融政策にも大きな影響を与える

FRB (連邦準備制度理事会) は物価の安定とともに雇用の安定を重視しており、雇用統計は利上げをはじめとするFRBの金融政策にも大きな影響を与える。イエレンFRB議長が6月5日の講演で「最大限の持続可能な雇用の確保」に触れていることからも、それはうかがえる。雇用統計の数値がよければ、労働需要が強く、景気も底堅いということを示す。労働需要が高ければ平均賃金が上昇しやすく、インフレ懸念につながり、FRBが利上げを行う可能性が高まることになる。

例えば、強い雇用統計を受け米国景気が順調に回復しつつあると判断したFRBは2015年12月、9年半ぶりとなる利上げを発表した。この時のFOMC (連邦公開市場委員会) の声明では利上げの理由について、「雇用は今年大幅に改善し、物価が中期的に目標の2%に向かうとの合理的な確信が得られている」と説明している。

またイエレンFRB議長は2016年5月27日にハーバード大学での講演で「経済成長が想定通り継続し雇用創出が続けば、FRBは今後数ヵ月以内に利上げすべきだ」との認識を示した。

このように、利上げのタイミングを計るには雇用情勢を見ることが非常に重要となる。

最も注目されるのは非農業部門雇用者数

では、雇用統計はどのように見ればよいのだろうか。公表される十数目の項目の中でも特に重視されるのが、「非農業部門雇用者数」と「失業率」だ。非農業部門雇用者数とは、農業以外の部門に属する事業者の給与支払い帳簿を基に集計された雇用者数のことだ。失業率は家計調査を基にしており、労働人口における失業者がどれくらいの割合かを示す指標だ。失業率は景気に遅行する傾向があり、景気動向をより敏感に反映するとされる非農業部門雇用者数の方が注目度は高い。

非農業部門雇用者数の見方としては、前月比でどれだけ雇用者が増減したかを確認することが重要だ。景気判断の目安としては、前月比20万人以上の増加なら回復局面にあるとされている。ただし、国税調査やクリスマス商戦前の臨時雇用など、一過性の要因で数値が上がることもある。

事前予想との差が重要なポイント

一般的には雇用統計の数値がよければ、為替相場はドル買い・円売りに動く。しかし、単純に判断できない場合も多いので注意が必要だ。重要なのは市場の事前予想 (コンセンサス) との比較で、事前予想からどれだけ上下に乖離するかがポイントとなる。雇用の安定を目標とするFRBの金融政策にも影響を与えるためだ。

一例を挙げると、2015年11月に発表された米10月雇用統計は予想を上回る内容だったため、発表後、米ドル/円は短時間で約1円以上も上昇した。

一方、予想より上ブレしても市場の反応が鈍いケースもある。2016年4月発表の米3月雇用統計は、非農業部門雇用者数、平均時給ともに予想を上回るという概ね良好な結果だったにもかかわらず、ドル買いトレンドには結びつかなかった。早期利上げを正当化するほど強い内容ではなかったと市場は判断したとみられる。

利上げ時期の予測についてはシカゴ・マーカンタイル取引所 (CME) が、金利の誘導目標が変更される可能性を確率で表した「Fedウォッチ」を公表しているので、これを併せて参考にするという方法もある。

相場は先々の景況感を織り込みながら推移するもので、利上げの可能性が高まったり、減退したりするだけで市場は大きく動く。利上げ判断に影響を与える雇用統計は、ますます注目度が高まっている。毎月の発表時には最新情報をキャッチして、資産運用に役立てたい。

(提供:株式会社ZUU)

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